入江選手のレース後インタビューを見てショックを受けた人も多いだろう。
インタビュアーの松岡氏はもしかしたらあそこでインタビューをした事を悔いているかもしれない。
あそこまではっきりと胸の内をさらけ出すとは正直思わなかった。
「リオの事は考えられない」
思えば北京五輪出場後、頭角を現し、タイム的にも金メダル最有力と言われながら2009年の世界水泳、惜しくも銀メダルに終わって以降、彼は常に金メダルの期待という重圧に悩まされ続けていたのだと今回改めて思った。
まだ23歳。
後述する寺川も大きな壁に当たりながら28歳となった今、抜群の安定感を誇るようになっている。
時が経てば、環境が整備されれば、再び意欲が甦って来る可能性も高いだろう。
その時はもう、ほんと、普通に何食わぬ顔でリオを目指すと言って欲しい。
鈴木選手。
ロンドンオリンピックでは正にシンデレラのようなきらめきと美しさで銀メダル1個、銅メダル2個を獲得した。
今回、彼女はあえいでいた。
全くタイムが伸びない。
ロンドンで彼女が出した200m決勝タイムは2分20秒72だ。
それが今大会、準決勝ノタイムは2分25秒77。
考えられない程の悪いタイムだ。
テレビによれば、試合前から自信がなくて泣いていたという。
何故、調子を上げてくることが出来なかったのか・・・。
おそらく彼女自身もがき苦しんでいる状況に違いない。
プロ野球選手でも実質1年目で活躍した選手のほとんどが陥る2年目のジンクスの罠。
ある意味鈴木選手もこの2年目のジンクスに陥ってしまったのだと思う。
ロンドン後の多忙を極めるスケジュール。
練習によって培われてきたスイマー鈴木としての理想の姿からはかけ離れた自分が居る。
幸いリオまでまだ3年ある。
間にもう一度世界水泳もある。
確かに道は険しく厳しい。
しかし決してロンドンのあの活躍は魔法でもなんでもなく彼女が実力で成し遂げた物である。
復活を願っている。
寺川綾。
必ず映し出される高校生スイマーだった頃の映像。
アテネでメダルを期待されながら8位に終わった時の映像。
映し出される過去の映像は基本的にここまでだ。
というのも、その後、寺川選手は大舞台に出る事すら出来なかったからだ。
入江選手の言葉ではないが旬を過ぎた選手と思われてしまった時期もあっただろう。
しかし彼女は不死鳥のごとく復活してきた。
2011年世界水泳50m背泳ぎ銀メダル。
2012年ロンドンオリンピック100m背泳ぎ銅メダル。
4×100mメドレーリレー銅メダル。
そして今回の世界水泳は100m背と50m背で共に銅メダル。
抜群の安定感。
全く崩れる事がなくなった。
しかし50m背では金メダルを狙っていた寺川選手はインタビューで「もう銅メダルはいらない・・・」
28歳にして金メダルが見える位置まで到達する寺川選手の精神的強さは何と言って良いのだろうか。
まだまだ上を目指す心意気を語る寺川選手。
2015年の世界水泳は30歳。
2016年リオ五輪は31歳。
常識的には苦しい年齢だが彼女の戦いは続く。