浅田のオリンピックが終わった。
先日のSPで考えうる限り最悪の、いや、誰も想像しなかった程のロースコアとなってしまった浅田。
天真爛漫だったジュニア時代から現在に至るまで常に世間の注目を浴び、プレッシャーと戦い続けた浅田選手。
浅田から楽しいスケーティングを奪ってしまった側の一員として、責任の一環を感じながらも、集大成と位置付ける最後のフリー演技をこの目に焼き付けようと、しっかりと見させてもらった。
浅田の代名詞「トリプルアクセル」
冒頭に跳ぶこの大技に、今まで何回歓喜し何回落胆した事か。
音楽は変わっても、振り付けは変わっても、浅田は最初のジャンプ、トリプルアクセルを跳ぶ事でその存在を知らしめてきた。
これが浅田の生きる道。
そのトリプルアクセルが今季初めて、最後の最後で見事に決まる。
世界中の浅田ファンの祈りが通じた瞬間だ。
続いてソチ五輪用スペシャルプログラム、トリプルアクセル後の3回転フリップ、3回転ループ!
さらにルッツを跳び、レベル4のスピンを挟んで、ダブルアクセル、3回転トゥーループの連続ジャンプ。
点数を見るとループとトゥーループがアンダ―判定だが、もうそんな事はどうでもよい。
元々、認定もGOEも演技構成点も我々素人にはブラックボックスなのだ。
目の前に躍動する浅田がいるというリアル。
それ以上何を求めるというのだ。
ラフマニノフに乗って、浅田のジャンプは続く。
3回転サルコー。
3回転フリップ、2回転、2回転の3連続ジャンプも綺麗にきまる。
最後のジャンプ3回転ループも見事に跳びきった。
浅田がすごいのはこれだけのジャンプを跳びきった後に、あの鬼気迫るステップが見られるという事だ。
鬼気迫るという表現は適切ではないかもしれないが、私はいつもここで鳥肌が立ってしまい、そのまま鳥になってしまいそうになる。
観客を魅了し、浅田集大成の演技はここに結実する。
やりきった思いが涙となる。
そして笑顔。
待ちに待っていたこの笑顔。
そう、4年間待ち続けていた浅田の笑顔を見る事が出来た。
ライブで見られてこんな幸せな事はない。
何点とれたなんてもう関係ない。
身体の底から湧きあがってくる感動。
それでもう充分ではないか。