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将棋名人戦挑戦者は羽生永世7冠! 努力する天才は衰え知らず

将棋A級順位戦挑戦者決定戦は羽生竜王が順位1位の稲葉8段に勝って佐藤天彦名人への挑戦権を手にしました。

今季のA級は史上稀に見る混戦で6勝4敗で6人が並ぶ大混戦。

パラマストーナメントで挑戦者決定戦が行われる前代未聞の状況でした。

 

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 順位戦終盤までトップを走っていたのに終盤失速した豊島8段でしたが、パラマスの勝ち抜き戦では久保王将、佐藤9段、広瀬8段を破り勝ち上がってきました。

その勢いを止めたのが羽生竜王

豊島を破り、そのまま稲葉8段も破っての挑戦権獲得です。

羽生にとっては正に転がり込んできたチャンス。

順位戦では終盤、稲葉、佐藤に連敗し、最終局で屋敷9段に勝った物の、一斉対局の最終戦前に対局を終了していたので、その時点ではプレーオフでさえも考えていなかったと思われます。

このチャンスを物にするところが第一人者の第一人者たる所以です。

将棋界で47歳はピークを完全に過ぎているのが現代将棋の常識です。

これまで隆盛を極めた羽生世代ですが、同世代の森内9段(18世名人)は既にフリークラスに転身しており、屋敷9段も今期A級陥落、残るA級棋士は羽生竜王と佐藤9段の二人。

B級1組でさえも丸山9段(名人経験者)が今期陥落し、郷田9段、木村9段しか羽生世代では残っていない状況です。

タイトル保持者を見ると羽生以外は、佐藤天名人30歳、菅井王位25歳、中村王座29歳、渡辺棋王33歳、久保王将42歳。

羽生47歳は際立って高い年齢と言って差し支えないでしょう。

 

羽生の通算勝率は7割を超えています。

2000局に到達しようかという対局数でこの数字は驚異的です。

6割台でさえ維持するのが難しく、実際に羽生以外で最も対局数が多くて7割を維持しているのは永瀬拓矢7段で384局です。

(ちなみに藤井聡太6段は70勝11敗勝率.864!)

羽生がいかに突き抜けた存在であるかを最も表しているのが、維持し続けているこの高い勝率だと思います。

そんな羽生でもここ2年はデビュー以来初めて勝率6割を割り、昨年度が27勝22敗で.551、今年度が.577でタイトル失冠も重なり、いよいよ羽生時代の終焉と思われました。

ところがご存知のように竜王戦で渡辺を破り永世竜王の資格を得るとともに永世7冠となり国民栄誉賞を受賞。

続いて名人挑戦権獲得と衰え説を吹き飛ばす勢いです。

名人位に復帰がなれば前人未踏、通算タイトル獲得100期の大台が達成されます。

ここまでの戦績を残してきたのは羽生が元々備えていた天性の資質によるところは大きいでしょうが、それ以上に47歳の今になっても常に研究を怠らないその姿勢によるところは非常に大きいのではないでしょうか。

こうして書くのは簡単ですが、羽生竜王の言動や周囲のコメントなどを総合的に見ても、おそらく研究と力を維持する努力は棋士の中でもトップクラスの物だと断言出来ると思います。

何しろチェスをやらせてもトップ級の実力を持つ羽生ですから、特別な頭脳を持っていることは間違いないのでしょうが、そんな男が人一倍努力を続ける。

それは強いのは当たり前です。

次々と定石が覆される新手、新構想が現れる現代の将棋界において長くトップ棋士で有り続ける羽生永世7冠の凄さに今さらながら気づかされる今回の名人挑戦者決定の報でした。