ロゲ会長が五輪マークがデザインされた封筒から取り出した、やはり五輪マークがあしらわれたボードに書かれた名前を静かに読み上げた。
「トーウキョー」
その瞬間の歓喜。
夏季オリンピックにおいては名古屋、大阪、前回の東京と敗れ続けてきた招致合戦。
努力が報われた瞬間だった。
「東京で明日を見つける」
いいねえ、このロゲ会長のコメント。
多くの問題を抱えているのは事実だが、まずは決まらなきゃ話は進まない。
国民の支持率が50%にも満たず、これでは開催など不可能と思われた所からの大逆転。
ひとつの潮目になったのはロンドンメダリスト達のパレードだろう。
沿道を埋め尽くす人、人、また人。
元々我々の国民性は土壇場になって初めて盛り上がる。
そのお祭りに、雰囲気に乗り遅れたくはないって感じは正直否めない。
あのパレードを境に国民の気持ちは開催賛成に変化していったように思う。
大会が始まれば120%盛り上がるのは間違いないんだから。
支持率70%獲得成功は大きな味方になったのは間違いない。
もう俄かでもなんでも良いではないか。
委員会の作戦勝ちだ。
プレゼンも良かった。
前回も日本のプレゼンは素晴らしかった。
ただ、北京、ロンドンときてまたすぐにアジアというのは初めから難しかったのだ。
今回、他の立候補地のプレゼンは見られなかったが、日本の出来は良かった。
フランス語を多く入れた作戦も上手かった。
映像も感情に訴える作りだったがしっかりと思いも入っていた。
このプレゼンで東京に投票した委員だってけっこういるんじゃないだろうか。
今回の開催決定は日本の強みであるチームワークの勝利でもあった訳だ。
オリンピックは間違いなく力と感動と勇気と希望を与えてくれる。
言わば全ての競技の世界選手権が一堂に開催される訳だ。
それを間近に見られる事がどれほど素晴らしい事か。
前回東京大会の時小学生だった私はオリンピックが終わった時、あの感動の閉会式が終わって聖火が消えた時の事を今でも鮮明に覚えている。
あの時のさびしい気持ち・・・。
それから50有余年、今から2020年が待ち遠しい。