昨年のバルセロナでの世界選手権。
100Mも200Mも4位に終わった入江は、レース後沈痛な表情で「リオの事は考えられない」と思いをぶちまけてしまった。
このまま入江は終わってしまうのか。
何とか立ち直って欲しいと願いながら、果たして復活が成るのだろうかという思いも少なからずあった。
本来であれば北島、松田両選手に代わって日本水泳陣を引っ張っていかねばならない存在だ。
しかし前述のように禁断とも言える言葉を発してしまった。
あれから8カ月。
その入江が逞しくなって帰ってきた。
独特な声やしゃべり方から、逞しさに欠ける印象を持っていた。
しかし今回、彼を見て瞬間的に何かが変わったと感じた。
修羅場をくぐり抜けてきた男の表情が見て取れた。
コメントも力強い内容に変化している。
彼の中で間違いなく何かが変わったのだ。
そう思ってレースに注目した。
ゴールデンエイジの先頭を走る脅威のオールラウンダー萩野公介。
昨年の日本選手権では5冠を達成。
今年こそ6冠をとの意気込みで臨んできたはずだ。
しかし今年は昨年以上に入江が大きな壁となって萩野の前に立ちはだかった。
100も200も終始入江がリード。
萩野は追いつきかけても結局入江を捉える事が出来なかった。
「止まっていた時計を動かせた」
「(萩野と)二人で世界を驚かせたい」
入江はこんなにも前向きで力強い言葉を発する男だっただろうか。
奈落の底から這い上がってきた男の言葉は重みが違う。
もう「リオの事は・・・」なんて言葉を聞く事はないと確信する入江の復活だった。