長谷川穂積が玉砕した後の試合。
WBC世界バンタム級タイトルマッチ。
王者山中6度目の防衛戦
相手は世界3位のシュテファーヌ・ジャモエ。
控室で帽子をかぶったその姿からはややひ弱そうな印象を受ける。
対する山中は自信満々の表情。
目の前に見えているのはジャモエではなく、その先のラスベガスのように感じる。
(テレビの演出のせいもあるかも)
確かにここまで初防衛戦のダルチニアン戦こそ判定だったが、以後4連続のKO防衛。
強敵にもひるまず強さを見せつけ、やや格下には圧勝と絶対王者の道を着実に歩む。
当然スーパーファイトを視野に入れるのは当然だろうし、その資格も充分に持ち合わせている。
訳のわからない相手ばかり選んで防衛戦を重ねるスタイルとは明らかに一線を画す山中のポリシーだ。
そこで迎えたジャモエ戦。
今日も神の左でノックアウト。
見栄えの良い試合をしようという意識が画面から見えてくる。
1Rから山中の左がジャモエを捉える。
無理に決めようとはせず、ジャモエの出方を見る。
相手の出方を見ながら、徐々に追い込み試合の後半で相手を倒すいつもの戦い方。
2R、ジャモエの顔面に左が炸裂し最初のダウン。
ここからジャモエの並々ならぬ闘争心を見せつけられる事になる。
帽子をかぶった控室での印象とは全く異なるジャオモエ。
3R以降、山中の強烈なボディーを何発ももらいながらも、接近しながら荒々しいロングフックなどを繰り出してくる。
時折ワイルドなパンチを受ける山中。
しかし冷静さはいつも通りで表情を全く変えない。
ガードの上からでも強烈な左を繰り出す山中。
ボディーを何発も打たれ、明らかにダメージを受けているが、気持ちが全く折れず、逆に前に出てくるシジャモエ。
何という男だ。
8R、山中の左ボディーにたまらずダウン。
ラウンド終盤にもストレートでダウン。
それでも起きてくるジャモエ。
さすがに少し驚いた表情の山中。
ここで8R終了。
放送席でもジャモエの闘志に驚きの声があがる。
そして迎えた第9R。
開始早々、またも山中の強烈な左ボディーがさく裂。
ここまで持ちこたえてきたジャモエだが、レフェリーは試合をストップ。
山中6度目の防衛が成った。
気力だけで立ち続けたが力の差は歴然としており、あれだけ強烈なボディーを何発も受けたジャモエはダメージが心配な程だ。
結果は山中、全く危なげのない試合で完勝。
左の強さも思う存分発揮し、その威力を知らしめた。
今の充実しきった状態の内に、山中が望むラスベガスでのビッグマッチが実現して欲しいと心から願う。
しかし、この試合、左で倒すという事に意識がいきすぎ、必ずしも満足いく戦いではなかった事もまた事実。
もちろん相手なりに戦い方は変えていくだろうが、今日の試合は心の中にちょっと先の試合が浸食していたような印象だった。
ジャモエ恐るるに足らず・・・
自信と過信、紙一重の戦い方だったように思う。
ちょっとだけ、今後に試合の為に苦言を呈したい。
山中慎介 23戦21勝(16KO)2分
シュテファーヌ・ジャモエ 30戦25勝(15KO)5敗