台風接近による悪コンディションの中、それでも見どころは随所にありました。
レース前にはいよいよホンダの復帰が正式発表され、ドライバーズPもメルセデスの二人による熾烈な争いが話題になり、可夢偉も帰ってきました。
盛り上げ方も楽しみ方もおそらく世界トップクラスでしょう。
レースも雨の中、オーバーテイクあり、ピットストップの駆け引きあり、タイヤの選択などドライバーとチーム一体の攻防が見られて非情に面白い展開でした。
あの悲劇が起こるまでは・・・。
ビアンキの大クラッシュ。
FIAが事故の映像使用を禁止したためか、テレビ中継ではスティールのスピンは映し出されていましたが、ビアンキの事故は全くうかがい知る事が出来ません。
当然結果を知っていますので、遠景から映すレッカー車のシーンでその状況を推測することは出来ましたが、事故を知らなかったら、おそらく最後までわからなかったでしょう。
実際、中継のクルーはビアンキの悲劇を少なくとも赤旗によるレース中断から終了まで気づいていなかったようです。
ドライバーたちは、事故後その場所を通っている訳ですから当然知っていたでしょうが・・・。
おそらく心は激しく動揺し、雨と重なってレースを続けられるような精神状態ではなかったでしょう。
表彰式でもシャンパンを口につけましたがシャンパンファイトはなく、レース終了後のドライバー、チームヘッドのコメントも皆一様にビアンキを心配する物が出ています。
常に死と隣り合わせの過酷なレース。
昨日のコース状況でも直線では300キロを超えるスピードが出てしまいます。
シケインやヘアピンでさえも80キロは出るという正に神業、プロフェッショナルの技術です。
己の命を担保にレースを進める訳ですから、F1を含むモーターレースの歴史は安全との戦いといっても過言ではありません。
ではなぜビアンキの事故は防ぐことが出来なかったのか。
今回の日本GP、選択肢としては、
○台風接近によりドライバーを守る為、ファンの帰宅困難を防ぐため開催中止。
○レース開始時間を早める。
○雨が激しくなった40周あたりで中止する。
40周だとちょうど75%消化なのでポイントは2分の1だった可能性はありますが、そういった判断も考えられます。
では実際にはどうだったのか。
台風が近畿東海に接近するのは6日の早朝と予想されており、ほぼそれは正確な予報でした。
観衆もほぼ満員だったと見受けられ、雨中の決戦は確実な状況ながら中止の判断は難しかったでしょう。
レース開始時間を早めるのも、台風本体に関係なく雨は降るので、早く開始したから天候の崩れが少ないとは言い切れません。
40周あたりで中止する。
これが一番可能性としてはあったと思いますが、中継を見ていると、確かにそのあたりで高く上がる水しぶきで後続の車が見えない状況になっていましたが、それは過去にも幾度となく見てきた光景です。
それに、その段階でもオーバーテイクを試みるドライバーの攻防がありました。
ピットストップでタイヤを履き換えて上位進出を狙うチームもあり、見ごたえある攻防が繰り広げられようとしていました。
もちろんレースが続く限り、たとえ条件が最悪でもベストを尽くすのが彼らの誇り高き精神なんでしょうが。
そんな中、スティールがスピンした同じ場所で1周後にビアンキがスピン。
それだけなら問題はなかったんでしょうが、スピンして制御不能になった車が事もあろうにレッカー車に突っ込んでしまうという不運・・・。
もう少しスピンして違う場所に流れて行ってたら・・・。
この事故を防ぐ可能性があったとしたら、スティールの事故の段階でセーフティーを出しておればという事になるんでしょうか。
いずれにしてもあってはならない事故が起きてしまったのは事実です。
ビアンキ選手の回復を祈りつつ、これを教訓にしてさらなる安全性の確保にハード、ソフト両面が進んでいくことを願います。