5月5日、パトリック・チャンが来季2015-2016シーズンの競技に戻ってくる事を発表しました。
既定の方針であったので特別な感慨はありませんが、発表のタイミングを見る限りチャンは120%充電出来ていると考えて間違いない事がわかりました。
もしチャンが今シーズン休養せず出場していたならば、結果として世界選手権で優勝する可能性はかなり高かったと思います。
もちろんそれは羽生選手が満足いくコンディションでなかったので・・・ということですが。
しかし、仮にそうであったとしても、今シーズンを休養したメリットの方がおそらくチャンにとっては大きかったでしょう。
彼の言葉を引用します。
「ソチ五輪が終了して、自分のピークは終わったかなと感じたとき、そのことを思い出してまだ自分は成長できると思い直したんです。それは必ずしも順位についてではありません。スケーターとしてさらに豊かな表現力を身につけて、よりバランスのとれた選手に成長していきたいと思ったんです」
出典:NumberWebhttp://number.bunshun.jp/articles/-/823276
チャンはバンクーバーまで4回転を跳べない選手でした。
ところが翌シーズン彼は4回転を確実に跳べるようになり、その美しいスケーティングとの調和も見事に世界選手権3連覇を成し遂げたのは皆様ご存知の通りです。
しかし、肝心なオリンピックシーズン、GPファイナルにおいて羽生結弦に及ばない事を悟り、「悪魔のような存在」と発言したのです。
チャンは正直な男です。
まともでは羽生に勝てない事がわかった彼は積み上げてきた自信が崩れ落ちていくのを感じていたに違いありません。
今シーズンを休養にあてても羽生に対するコンプレックスはどうやら残っていることは次のコメントで想像出来ます。
「男子は、後になってYouTubeでしか見ていないんです。ハビエルの4回転も、ユヅルの3アクセルなども、相変わらず素晴らしいなと思いました。でも正直に言うと、途中は早回しで見ました。今までのプログラムとあまり変わってない印象だったので」
出典:NumberWeb
前段で、「一番感動したのはアイスダンス云々」とありますが、ソチの悪夢がチャンから男子フリーを遠ざけていたのは間違いないと思います。
それでもチャンにとって休養はプラスにこそなれマイナスにはならないでしょう。
フィギュアスケートはジャンプを跳ぶ(もちろん一番の要素ですが)だけでは見る人の感動を呼ぶ事は出来ません。
表現力との調和において、それこそ観客のスタンディングオベーションを生むほどの感動が生まれるのです。
チャンは休養中に様々な思いを重ねることによって、この表現力に磨きをかけようとしているのでしょう。
彼がどのようなプログラムを作って復帰してくるのか。
来シーズンのルール改正がどのようになるかわかりませんが、転倒しようがジャンプを回りきって降りてくる事が一番重要と思われる現在のフィギュアスケートに一石を投じてくる可能性は十分あるでしょう。
ジャンプと芸術性のバランスに長けたチャンがさらに極めた演技を披露するのか。
今年のGPシリーズは注目です。