ほとんどの試合が井岡一翔選手のセミファイナルで行われ、地味な印象が否めない高山選手。しかし彼は誰も成し遂げたことがない4団体のチャンピオンに輝くなど、確実にボクシングファンの記憶に残る選手となりました。今回は昨年大晦日に獲得したIBFの防衛戦。相手は高校4冠のホープ原隆二選手。あの田中恒成選手との試合は後楽園ホールのファン達が興奮する熱闘。惜しくも10RTKOで敗れましたが、5月の再起戦では2RKO勝ち。ランキングこそ10位ですが高山選手にとっては侮れない選手です。
見方によっては井岡選手より印象深い試合を展開した高山選手の試合を少し振り返ってみます。
高山選手の特徴は何といても無尽蔵のスタミナと手数の多さです。
相手選手の心が折れるまで打ち続ける姿は驚きを通り越してアメージングの領域です。
もちろん相手の出方によって引く事もありますが、何だかず~っとパンチを出し続けている印象です。
前回のファーラン・サックリン・ジュニアとの防衛戦もけっこう相手の重いポンチももらっていたんですが、攻めて攻めて攻め続ける内に相手が完全に嫌がってしまいました。
今回の原選手もハードパンチャー。
高山と言えどあのパンチをまともに喰らえば立ってられないダメージを受けるでしょう。
実際立ち上がり、圧力をかけてくる原選手。
ここで原選手はいける!という感触を持ったと思います。
ところが3R、高山選手が偶然のバッティングで左目上をカット。
率直な印象は試合が止まるのでは・・・と思うほどの流血でした。
この段階で試合終了なら試合は引き分けとなり高山防衛となります。
ちょっと原選手やりにくいシチュエーション。
4Rが終わるまでに試合続行不可能となった場合せっかく優勢に進めているのに引き分けとなってしまいます。
もしかしたらちょっと攻めあぐねて心の隙が生まれたかもしれません。
逆に高山選手がこのバッティング以降エンジンがかかったように攻撃を見せ始めました。
目の上のカットなど全く気にならない感じで手数が増え始めました。
試合成立の5Rに入ってからは、はっきりと高山選手のペースになっていました。
カウンター気味に重いパンチを高山選手に見舞おうとする原選手ですが、トップギアに入った高山の攻撃は止まらなくなっていました。
そして迎えた8R。
高山選手のラッシュにより原選手は明らかに困惑の表情。
原選手逆転の一発を狙いますが底なしのスタミナを持つ高山の執拗な攻撃に心が折れたか全く手が出なくなりました。
ここでレフェリー割って入って試合をストップ。
高山選手見事に防衛成功。
バッティングをきっかけに自分のペースを取り戻した高山。
バッティングにより試合ストップを恐れた原。
明暗が分かれました。
試合後WBO王者田中恒成との絡みもあり、一気に統一戦の機運が高まりましたが、おそらくは高山選手のたったひとつの忘れ物、WBA“レギュラー”王者獲得を目指し、ヘッキー・ブドラーを照準にするのではないでしょうか。