「嫌われた監督」を読んだ。
スポーツノンフィクションでは屈指の名著ではないだろうか。
落合博満氏の中日監督時代の8年間が書かれている。
野球ファンなら覚えているだろう。
落合監督は中日の監督を務めた8年間でリーグ優勝4回を誇った。
それ以外も全てAクラスで、2位からCSを勝ち抜き日本一にも輝いた。
文句のつけようがない成績ではないか。
ところが最後は解任と言って差支えない去り方をしたのは記憶に新しい。
私ははっきり覚えている。
「補強は必要ない。」
「今いる戦力を鍛えれば十分優勝できる。」
ストーブリーグは各球団が弱点の補強に乗り出すのがあたりまえだ。
落合監督の発言には驚いた。
そんなこと言い切って大丈夫なのかと思った。
しかし結果は見事リーグ優勝。
現役時代から貫いてきた俺流が炸裂したのだ。
しかし最後は2シーズン連続でリーグ優勝したにも関わらず解任。
監督とはいったい何なのかを感じさせられたことを覚えている。
あれから10年。
今年も監督の話題が尽きない。
巨人の歴史的大失速の責任を問われた原監督。
ヤクルト投手陣を立て直すなど前年最下位からリーグ優勝を成し遂げた高津監督。
同じく前年最下位オリックスの中嶋監督。
選手の潜在能力を巧みに引き出し、その力を結集させ見事にリーグ優勝を成し遂げた。
原監督については勝てば官軍待負ければ賊軍ってやつだろう。
昨年まで、いや、今年も前半は原監督に対しては絶賛する人が多かった。
来年からの3年契約には驚いたが、来年も開幕から今年のような成績だったら辞任、解任は当然有り得るだろう。
高津監督は昨年も8月上旬までは5割をキープしていた。
後半崩れたが、その反省を今年に活かしたのだろう。
今年は4月14日に貯金を作って以降一度も借金生活に戻ることなく順調に勝ち星を伸ばしていった。
中嶋監督は昨年、前任西村監督解任を受けて監督代行に就任。
昨年こそ結果は出なかったが今年に入り持ち前の育成力を活かして見事に優勝。
この両チームの躍進はもちろん選手の力によるところが大だが監督の手腕もまた大きかったに違いない。
さて今年も日本シリーズを前にセ・パ両リーグで大物の監督就任劇が見られた。
さらに常勝軍団ソフトバンクの監督を工藤監督からバトンを受取った藤本博史氏。
そしてもう一人は誰もが驚いた、日本ハムファイターズ監督に就任した新庄剛志氏だ。
どんな采配を揮うのか、選手のモチベーションをどのようにアップさせるのか。
三者三様、それぞれ個性が全く異なる。
藤本監督はその成り立ちがオリックスの中嶋監督に似通っている。
選手の適正を見極め能力を最大限出させるような采配を見せてくれるように思う。
主力選手の過渡期であり3軍、2軍監督を経た経験は時期的に打って付けだ。
立浪監督は中日最後の切り札だ。
厳しさを前面に出してくるのは間違いなく、練習量も半端ないだろう。
規則も厳しいことが予想される。
現代っ子達が果たしてついていけるのか。
落合監督の時とはまた違った緊張感がチームの内外に生まれるだろう。
吉と出るか凶と出るか。
当然長期政権が前提だろうが、もし失敗すれば中日にとって大きな損失になる。
落合監督は強いチームを作ったが人気がなかった。
その後中日は低迷期に入ったと言って過言でない。
立浪ドラゴンズに求められるのは強くて人気もある球団だ。
そして新庄監督だ。
最初監督候補として新庄氏の名が出た時、おそらく私も含めて冗談でしょと思った人がほとんどだろう。
しかしそれが現実となって発表された時、本当に椅子から転げ落ちそうになった。
高橋由伸氏がコーチ経験もなく監督になった時、皆は大きなハンデと言った。
阿部慎之助1軍チーフコーチも時期尚早と言われている。
帝王学を学んでから監督に就任する。
そういった世間の常識をひっくり返した新庄新監督就任劇。
2006年現役引退から実に15年の時を経ての監督就任。
監督就任会見でのパフォーマンス。
しかしそういった派手な行動とは相反する野球に対する真面目な姿勢。
選手に求めることや、野球観は至極まとも。
何かやってくれそうな気配が日ごとに増していく。
来年は監督が面白い!