何かと山田君の起用法について話題になっている近江校。
センバツで明らかに異変が感じられたのに続投させたことが原因だ。
確かにプロ野球でも中6日で投げているにもかかわらず100球をひとつの降板のめどにしているのに、高校野球が連投連投で身体を酷使するのはおかしい。
しかしそういったことを度外視した中に感動が生まれるのも事実である。
今日の近江と高松商は正にそんな試合だった。
かつては近畿勢の中で滋賀県勢は少々後れを取っていた。
甲西が旋風を巻き起こしてベスト4に残った時は沖縄興南が初めてベスト4に進出した時と同様の盛り上がりを見せた。
故阿久悠氏が決勝戦に進んだ近江校を詩にした頃からけっこうドラマチックな試合を見せてくれるようになったが、その決勝戦で敗れた試合を含め、ツーランスクイズで敗れた試合や、今センバツでの決勝戦での大敗など今までは敗戦の美学に関する話題ばかりだった。
ところが今夏の近江校は違う。
投打にわたって気迫あふれる山田君を筆頭に、今までのチームに見られたひ弱さが全く感じられない。
高松商も一時甲子園から遠ざかっていたが、ここ最近は復活目覚ましく、単に甲子園に来るだけでなく結果も残している。
特に浅野君は上背はないが長打力は本物で、今日の山田から放ったバックスクリーンへのホームランは驚いた。
高松商は申告敬遠も含めて得点の全ては浅野君が何らかの形で絡んでおり、山田対浅野という見方をすれば浅野に軍配が上がっていた。
しかし近江は春までの山田頼みのチームから変貌を遂げていた。
7回に逆転を許したすぐ裏の攻撃で再逆転。
山田以外の打者もチャンスに強かった。
しかし再逆転のあとの8回、山田は明らかにおかしかった。
つったのか、痙攣していたのか右足がグラグラして球に全く威力がない。
先頭打者が四球で出塁。
テレビで見ていても、もう投げるのは無理とわかるほど。
しかし続投。
ここで私が思うに高松商としては残念なシーンがあった。
同じように投げるのがやっとという状態だったが、次打者がワンバウンドのボールを空振りしてしまい三振。
山田は大げさに言えばボールを投げるだけで精一杯の状態。
ストライクとボールの区別もはっきりしていた。
ストライクをカットしておけばほぼ四球を選べただろう。
これは山田助かった。
結局次の打者も四球になりようやくここで投手交代。
ここで登板した星野投手がピンチの中、リリーフの場面でいきなり対戦した浅野を打ち取ったのだ。
これでほぼ勝負あった。
アンラッキーなヒットも打たれたりしたが、星野の球は走っていた。
最終回も四球を2個与えたが、慌てるそぶりも見せず最終打者を打ち取って試合終了。
見事にリリーフとしての仕事をやり遂げた。
近江校はこれで甲子園3季連続のベスト4。
滋賀県のチームでこれほど力強く勝負強いチームが出てきたことに驚きを禁じ得ない。
最後に大阪桐蔭の敗戦には少なからず驚かされた。
勝って当然という評判、そんなことを言われて勝ち進むことは容易ではない。
まして高校生。
やはり高校野球は最後の最後まで何が起こるかわからない。