いよいよ始まったパリ五輪。
開会式が終わったと思ったら、次から次へと競技が行われ、見る方は目が回る。
何しろあらゆる競技の世界選手権が一堂に会するようなものだから凄い事だ。
パリ五輪についての投稿は基本的には観戦した競技を中心に投稿するつもりだ。
今日は女子柔道48キロ級。
日本勢は世界選手権3連覇中の角田夏実選手が出場。
52キロ級時代には、あの阿部詩選手にも勝ち越している程の強さを誇る。
そんな角田選手の得意技は巴投げと関節技。
2回戦、3回戦、準々決勝とこんなに綺麗に決まる巴投げってあるのかと思う程の鮮やかな切れ味。
丸山城志郎の巴投げもなかなかのものだったが、角田選手の巴投げはとても美しい。
迎えた準決勝。
相手は若干18歳、スゥエーデンのタラ・バブルファト選手。
トップレベルの選手が思わぬ相手に負けるとしたら、こういった若手選手。
それまで圧倒的強さを見せていた角田選手だが、タラ選手は角田選手を研究し尽くしている印象。
角田選手の組手にさせてもらえず、それでも第二の武器である関節技に持込もうとするが、身体を密着してこれを防ぐタラ選手。
試合は4分で決着つかずゴールデンスコアの延長戦に。
ここまで共に指導2枚。
これが3枚になると反則負けとなる。
角田選手も徐々に良い組手に持っていけるようになるが、何とか凌ぐタラ選手。
膠着状態となった6分40秒あたり、タラ選手が攻めに出てこれを角田選手が防いだ瞬間、タラ選手に3枚目の指導が出て角田選手の反則勝。
見ていて一瞬「ん?」と思ったがタラ選手に反則負けのレッドの表示が。
タラ選手としては納得出来るはずもなく、一瞬理解出来ない表情。
状況を理解した後、主審に猛抗議。
しかし判定は変わらず試合は成立。
これまで数多く柔道を見てきたが、これはちょっと後味が悪かった。
もちろんここで指導が出なくても、角田選手が勝った可能性は高いと思う。
というのは、タラ選手の技に角田選手が屈するとは思えなかったからだ。
しかしタラ選手、審判には不満の態度を示していたが、角田選手にはしっかりと抱き合って健闘を称えあう姿。
タラ選手はフェアプレイの精神を持つ選手だった。
まだ18歳。
将来は48キロ級を引っ張っていく存在になるのは間違いない。
尚、解説のオリンピック2連覇の大野将兵氏は、タラ選手が攻めに出る前の組もうとしない姿勢に対して指導が出たと解説していたことを付け加えておく。
そして迎えた決勝戦。
相手は世界ランク2位。
モンゴルのバーサンフー・バブードルジ選手。
準決勝のタラ戦と違い、角田選手の組手。
バーサンフー選手も角田選手に投げられる前に自ら巴を繰り出す。
投げられたくないので、先に技をかけようと言う意味の消極的な技に見える。
そして迎えた1分、角田選手伝家の宝刀巴投げが炸裂。
宙高く舞い上がったバーサンフー選手がゆっくりと畳に叩きつけられた。
技あり!
俄然優位に立つ角田選手。
その後、組み手争いからバーサンフー選手も巴投げ。
これを難なく防いだ角田選手が再びバーサンフー選手を巴投げで天高く突き上げる。
バーサンフー選手上手く身体を回転させて逃れるが、すかさず角田選手が寝技に持ち込み、そのままタイムアップ。
角田選手、今大会日本選手初の金メダルが成った瞬間だった。
見事な柔道を見せてくれた角田選手。
表彰台では涙、涙で見ているこちらも、まるで親戚のように嬉しくなった。
また、直前まで戦っていた表彰台の4選手が台上で記念撮影をしたり、互いに健闘を称えあう姿を見て、スポーツの良さを改めて実感した次第だ。
角田選手が最高にクールでカッコいい柔道を見せてくれた。
ここで一句 「巴投げ パリの空に 放物線」