大相撲名古屋場所が終った。
長く熱戦の場となっていた愛知県体育館も今回で役目を終える(コロナ禍を除く)。
目標としていた二桁、10回目の優勝を成し遂げた。
成績は12勝3敗。
優勝の数字としては物足りないが、10日目までの内容は盤石。
正に横綱相撲で、他の力士と役者が違うと言えるものだった。
横綱になって、休場明けで15日間を皆勤したのは今場所で4度目だが、全て優勝。
その勝負強さ、崖っぷちの強さには驚かされる。
序盤は照ノ富士の独走を許す他の力士の不甲斐なさに、私は腹を立てていたが、途中から照ノ富士の真摯な土俵態度に敬意を持つようになり、照ノ富士の優勝を願うようになった。
ところが11日目以降の5日間で3敗。
特に14日目、千秋楽と勝てば優勝の場面で連敗。
10日目までとは別人のような相撲内容。
今場所は二人の照ノ富士が居たのだ。
おそらく身体が限界にきて悲鳴を上げていたんだと思う。
何としても二桁優勝をの思いで、気力を振り絞りながら土俵を勤めていたに違いない。
千秋楽は星の差ひとつで追う隆の勝が勝ち、照ノ富士は琴櫻に初黒星でついに相星。
本割で敗れた隆の勝との優勝決定戦。
とても内容の濃い一番だったが、照ノ富士が隆の勝を寄り切って、史上11位タイ10度目の優勝を成し遂げた。
一方、長く大関の座にいた貴景勝が9度目のカド番でついに陥落。
霧島も勝ち越したものの二桁に届かず1場所での大関復帰はならず。
大の里も照ノ富士の連勝を止めたことが評価されて殊勲賞を受賞したが、入幕4場所目にして初めて二桁勝利に届かなかった。
琴櫻は千秋楽で照ノ富士に勝って10勝と形を整えたが、今一つ勢いが感じられない。
はっきり言って、今場所の全体的な印象は低調だったと思う。
今場所は照ノ富士の照ノ富士による照ノ富士のための場所だったのだ。
今後に目を移すと、照ノ富士は二桁優勝というひとつの目標を達成したことにより、これまでのように現役に固執することは無いような気がする。
次にどこか不安なところが出たら、引退を決断すると思う。
大関以下の力士にはチャンス到来なんだから、覚悟を持って上を目指して欲しい。
もぐらたたきの現状を打破して突き抜けてくる力士の登場を願う。
残念なのは先々場所新入幕で優勝した尊富士の怪我。
今場所途中出場して2番勝ったが、再び休場。
完全に治るのか心配だ。
そうでなくても最近怪我に泣いた力士が余りにも多い。
今場所も朝乃山が大怪我。
公傷制度がない今、再び大きく番付を落とすことになりそうだ。
それ以外の力士も怪我に泣くケースは枚挙に暇がなく、貴景勝も霧島も高安も正代も栃ノ心も結局怪我が元で大関を陥落してしまった口だ。
ここ最近公傷制度復活の声も聞こえてくるが、検討をするのは良いが、力士の大型化が顕著な現在、並行して力士の健康管理、怪我に強い身体づくりや稽古方法などを真剣に考えて欲しい。
明るい兆しとしては伯桜鵬が十両13枚目で11勝4敗。
今場所再入幕の若隆景も11勝4敗。
怪我に泣いた2力士が復活の扉を開いた。
綱争いは琴櫻、大の里が一歩リードしているが、ネクスト横綱を目指して白熱した取組の増加を期待したい。
暑くて長い夏巡業で力を付けた力士たちが相まみえる秋場所は番付発表8月26日。
初日9月8日、千秋楽(おそらく38代木村庄之助最後の軍配)9月22日だ。