男子シングルは羽生の劇的な逆転優勝で幕を閉じた。
その差僅か0.33!
勝負事にたらればは禁物だが、もし羽生が冒頭の4回転サルコウでGOE減点をもらっていたら・・・。
もし町田が3回転ループをもう少し奇麗に着氷していたら・・・。
ほんの僅かの差が明暗を分けた今回の金と銀である。
もうひとつ、たらればを許して頂けるなら、4回転3本を成功させたフェルナンデスが、ルッツを普通に飛べていたら・・・ハビエル君が羽生を上回って優勝って結果もあった訳だ。
結局ほんの僅かのアヤで順位が決まったのだ。
町田もフェルナンデスも千載一遇のチャンスを逃してしまった訳だが、
これは羽生の、彼の言葉を借りれば「意地」が、二人よりもほんのちょっとだけ優勝に懸ける執念として上回ったってことだろう。
キスクラでトップに立った瞬間、感情が爆発してピョンピョンとび跳ねた事でもわかる。
実際羽生はフラフラ状態だった。
ジャンプも気力だけで跳んで、ドスンって感じで降りてくる。
先日も書いたが、今大会羽生は今までに蓄積した練習量の貯金だけで戦ってきたのだ。
それに「意地」という武器をプラスしただけで、結果優勝してしまう羽生のすごさ。
男子フィギュアスケート界は当分の間羽生を中心として回っていく事になる。
インタビューで嬉しい言葉が聞けた。
町田選手「来年はこれを狙います」
小塚選手「これではっきりと続ける理由だ出来た」
この二人が来季も現役を続ける意思を明確に話してくれた事だ。
あなたがいたから僕がいた。
羽生も高橋がいてたからこそ、これだけの選手になれたのである。
町田、小塚、彼らがいてくれる事で、他の若手も伸びるのだ。
SPで最高の演技を見せたベルネル。
昨日のような演技が出来ない。
すると途中から大観衆の手拍子が。
なんと日本のファンの優しい事か。
フェルナンデスの演技に対しても、会場全体が手拍子。
もしかすると羽生選手を逆転するかもしれない状況下での相手選手に対する応援。
フェアプレーの精神と言ってよいのか。
おそらく海外ではこういう状況で相手選手に手拍子という事にはならないだろう。
演技終了後に素晴らしい演技に対して賞賛の拍手を送るのはもちろん必要だが。
素晴らしい事と思いつつ・・・選手たちにとってリンクは戦場なのに、観衆は、まっこと平和な状況だなあ・・・ほんの僅かだが複雑な感情がよぎった。