ソチ五輪以降、初の羽生、チャン両選手の顔合わせとなったスケートカナダ。結果はSPで出遅れた羽生選手の追い上げ及ばず、パトリック・チャンがフリートップの得点をたたき出してSP首位の村上大介選手を逆転し復帰第1戦で優勝しました。次週カップオブチャイナではいよいよ浅田選手が復帰ということで益々盛り上がりそうですが、まずはスケートカナダの感想を・・・。
まずは男女シングルの表彰台選手をおさらいの意味を含めて以下に記させて頂きます。
○男子
優勝 パトリック・チャン 271.14
2位 羽生結弦 259.54
3位 村上大介 252.25
○女子
優勝 アシュリー・ワグナー 202.52(PB)
2位 エリザベータ・トゥクタミシェワ 188.99
3位 永井優香 172.92(PB)
シニアデビューの永井選手が堂々3位表彰台。
日本の次世代選手にとってGPシリーズは力をつけていく格好の場となりつつありますね。
樋口選手も復活してきたようですし、女子は益々層が厚くなりそうです。
さて男子ですが羽生選手がSP後半ジャンプ要素2個がまさかの0点。
私はこの2年越しのSPのイーグル、3A、イーグルで見せてくれる美しさにいつも鳥肌を立てるほど好きなプログラムなんですが、他のブロガーさん複数の方が、この曲ではタイミングが合わない的な事を書いておられました。
これだけ何回やっても上手くいかないのは、ある意味異常な事で、もしかするとそういった側面もあるのかなと同意方向に傾いています。
しかし、このプログラムでSP101.45点超えを目指して欲しい気持ちがあるのもまた事実です。
結局SPで付けられた差をさらに広げられてチャンが復活Vを成し遂げた訳ですが、採点を見て驚きました。
誤解していただきたくないのですが決してチャン選手の演技を否定するものではありません。
チャン選手らしい美しいスケーティングで魅了されたことは間違いありません。
素晴らしい選手が復活してくれて嬉しく思っています。
ただここで記録された演技構成点95.16点は少し盛りすぎだと思います。
彼が持つ世界最高フリー得点2013年エリックボンバール杯の196.75点。
この時の演技構成点が96.50点。
この時は世界選手権3連覇中の正に絶頂期。
その時とほぼ同じ。
確かに魅せてくれましたが、演技構成点という抽象的な部分で羽生を除く村上選手以下の各選手と16点以上も差がついてしまえば、いくらジャンプを見事に決めても絶対に追いつく事は出来ません。
休養後も変わらずチャンは世界選手権で金を取らせてあげられる格付け選手という事ですね。
どうも文字で書くとチャンを批判しているようになってしまいますが、そうではありません(キッパリ)
羽生選手について書きます。
基礎点が90.50.
4回転ジャンプ3度はいずれも回りきっていました。
ただ3Aからの連続ジャンプ3Tが1Tになってしまいましたがここが本来の3A3Tなら基礎点はさらに4.07点上積みされます。
スピンなどのレベル落ちもありますがそれはここでは見ないでおきます。
そうなると、ほぼ95点の基礎点という恐るべき高難度プログラムという事がわかります。
ちなみにチャンの今大会の基礎点が76.92点。
2回目の4Tが3Tにしましたのでここは普通なら6点上積みできる訳です。
それでも83点前後の基礎点。
羽生選手とは実に12点もの差があるってことになります。
ところがGOEが得点には付いてきます。
今大会GOEだけで比較すると羽生がプラス7.85点に対してチャンは実に18.25点。
基礎点は低い物の、出来栄えが良く基礎点の差を10点以上縮めて僅か3.18点にしました。
これに、卓越した演技構成点が加われば羽生がいくら難易度の高いプログラムで挑んできたとしてもチャンが上回ってしまう訳です。
ちなみに今大会の羽生の演技構成点は88.94点。
かなりの高得点ではありますが、それでもチャンに6点程の差をつけられています。
羽生選手のフリーPBの時の演技構成点が(昨シーズンのGPファイナル)91.78でした。
これはちょっと考えないといけません。
羽生は昨シーズンからとにかく難易度の高いプログラムを作って挑んでいます。
これは羽生の持つ高い技術があってこそで、そう簡単に誰もが出来ることではありません。
しかし体力的に相当きつい事は間違いありません。
昨日も演技終了後の発汗や息遣いは大変な物でした。
最後のルッツの転倒はおそらく疲れから来るものだったと思います。
基礎点を低く抑えてGOEを多くもらう。
基礎点は高いがGOEが低くなる。
アプローチの違いという事ではありますが何とも言えない現象が起きていますね。
ただそんなことは羽生本人も、戦略家であるオーサーコーチも気付いていない訳がありません。
おそらく、オリンピックシーズンまでの中間年である今年、あえて高難度プログラムに挑み、更なる基礎力アップを目指す。
オリンピックイヤーでは裏付けされた技術力を持って、気持ち余裕のあるプログラムで臨んでも高いGOEをもらう。
それだけ完成度の高い演技をすれば自然演技構成点も高い得点をもらえる。
そういった長期計画の元に今の羽生のプログラムがある。
そう考える事にしました。
今年の世界フィギュアは大きな目標ですが、最終的な目標はピョンチャンでの五輪連覇。
それに向かって歩む羽生結弦。
やはりそれが羽生選手の生きる道なんでしょう。
ほとんど羽生とチャン両選手の事ばかり書いてしまいました。
他の選手についても少し。
村上選手頑張りました。
女子のゴールドといい、しっかりGPシリーズに向けて仕上げてきました。
フランク・キャロルはそういう組み立てをしていたということですね。
ファイナルに向けては第4戦で宇野選手と進出をかけた戦いとなります。
女子ワグナー先週の今季充実度が見えてきました。
多くの選手が選曲するムーランルージュ。
今までこの曲で一番好きなプログラムは中野友加里さんがSPで使用した時の物なんですが、これ素晴らしいですね!
ワグナー先週の中でも最高傑作になる予感。
これは浅田選手も、ロシア勢も大変です。
来週はいよいよその浅田選手が登場します。
見事な復活を遂げた浅田選手。
国際舞台で見せてくれる久々の演技。
今からワクワクドキドキです。