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「空母いぶき」を観てきました 佐藤浩市発言への批判で印象が変に固定化されてしまった不幸な映画

仕事以外全部趣味

「空母いぶき」を観てきました。

公開前、首相を演じる佐藤浩市の「すぐおなかを下す設定に・・・」発言に複数の人が噛みつき、ちょっとした論争になってしまったこの映画。

こういったケースは宣伝効果となる場合もありますが、この映画に限ってはマイナスに働いたような気がします。

映画自体に負のバイアスがかかり、鑑賞を辞めた人も多いのではないでしょうか。

本来、映画を実際に見て評価されるべきなのに、制作側にとって不幸な出来事です。

実際に映画を見た人の評価も真っ二つに分かれていますが、映画館に足を運んで自分の目で確かめてきた私の感想を以下に記します。

まず満足度から申し上げますと、けっこう高かったです。

最初に、問題となった佐藤浩市首相。

確かにエンディング間際に安倍さんを意識した台詞もあったと思いますが、そんなことはどうでも良いことで、この映画を語るのはそこじゃないだろうって思いです。

もうひとつ批判で目立つのが攻撃をしかけてくる国が東亜連邦という架空の設定で、中国への忖度と言われている件。

まあそれはねえ、いくらそこにある危機を描いているとは言え、あくまで限りなくフィクションの世界なので仕方がないかと・・・。

この映画の肝は、西島秀俊演ずる「いぶき」艦長と、佐々木蔵之介演ずる副長の二人が、考え方に違いはあれど(根本に平和への願いがあるのは同じであり)相手国の攻撃に対して秒単位で決断をくだし、艦隊の各艦長、隊員がこれらの命に対し全力を尽くして阻止する姿にあります。

自衛艦はDDH1隻、DDG2隻 DD2隻と潜水艦1隻からなる艦隊。

各艦長の個性が良く描かれており、ここらあたり私と同年代なら知っておられると思いますが、サブマリン707や青の6号を思い出しました。

ビジュアル的にも現存する自衛艦を表しておりリアルです。

エンドロールを見ても自衛隊の協力は(当然)得られてないので、よくここまで表現出来たなと感心しました。

このことで、より現実的な映像が出来上がった効果は大きかったですね。

テンポも良く24時間の出来事を中だるみなくラストまで描き切っています。

リアルな世界では、アメリカが日本海に空母を派遣し北朝鮮と一触即発となったのは記憶に新しいところ。

実際の現場では我々国民が知らない丁々発止のやり取りが成されていたことでしょう。

この映画でも本田翼演ずるジャーナリストが捉えた映像を見て、国民が初めて間近で起きている緊迫の状況を知ることになります。

時は正にクリスマスイブ。

平和ボケ日本と言われているギャップ。

しかし今まで、もしこういうシチュエーションがスクリーンで流れたら、私は何と呑気で軽い映画と非難したに違いありません。

しかし現代の戦争はこういったサイレントで進行するのが実はリアルなのかも・・と。

紛れもなくこの映画は反戦映画で有り、出来る限り血を流さないように最善を尽くす艦隊隊員たちと、偶然取材で艦に乗り合わせたネットニュースと新聞記者の目を通してのみ現場を知ることが出来た人たちの平和への祈り。

コンビニ店長の中井貴一がサンタさんの靴に添える手書きのメッセージ。

戦争が始まるかもと思った民衆が押し寄せて空っぽになったコンビニの棚。

店長が持ってくる大量のサンタの靴。

監督が伝えたかったことは、これだったんだと思います。

 


映画『空母いぶき』予告編