起こってはならない、しかしいつ起きても不思議ではない事態が目の前に繰り広げられてしまいました。
激しく衝突した羽生とハン・イエン両選手。
時差がほとんどないのでライブでこの瞬間を見ていた人も多かったに違いありません。
そのほとんどの人が、二人の棄権を確信したであろう大事故でした。
治療を終えて戻ってきた羽生の姿を見て、その思いはますます強くなりました。
しかしその思いとは裏腹にに羽生は棄権しないのでは・・・とも感じていました。
般若のような表情でリンクに再び入り、滑走を始めた時、テレビに向かってやめろ!やめろ!と思わず叫んでいました。
ジャンプを跳んで見せたりしていましたが、普通の状態でない事は誰が見ても明らかです。
私は本人がやりたいと言ってもドクターストップがかかると思っていましたし、かけてくれと願っていました。
まさかそういった仕組みがないとは恥ずかしながら今に至るまで知りませんでした。
結局羽生どころか、ハン・イエンまでもが棄権せずに演技を行う事になりました。
これは戦う事に対する人間の本能だと思います。
何もスポーツに限った事ではありません。
御嶽山の火山噴火や大震災などでの救助活動もそうですし、日常の職場でもそうでしょう。
人はいざという時には棄権、撤退よりも前進を選択してしまうのです。
当事者は責められるべきではありません。
その心意気に対しては称賛されて然るべきです。
あとはいかに周りが冷静な気持ちでこれに対処できるかという事に尽きると思います。
私は何としてでも今日は二人に演技をさせないようにして欲しかったです。
ハン・イエンはもしかしたら脳震盪だけで身体のダメージは少なかったかもしれません。
しかし、羽生についてはおそらくNHK杯出場は難しいでしょう。
羽生は先の事より、今日のフリーを滑り切る事を何よりも優先した。
それが彼のプライド。
そういう事でしょう。
そして見事に満身創痍の中滑り切りました。
キスアンドクライでの号泣は何とか責任を果たせた事で感極まったんだと思います。
もう十分に頑張りました。
GPシリーズは休んで世界選手権を目指して身体を万全にしましょう。
これを機に協会は危機管理を充実させて欲しいです。
優雅な演技とは裏腹に身体への負担はとんでもなく大きいです。
いみじくも松岡氏が「美しく見せる事がフィギュアだと思っていましたが、これはとんでもないスポーツだなと思っています」と話していましたが、正にその通りだと思います。
ひとつ間違うと選手生命を縮めてしまうような今日の出来事。
選手を守る仕組みを早急に構築して欲しいです。
それにしても羽生のプロトコルを見て驚いたのは、GOEの減点もかなりありましたが、何とコフトゥンより技術点、構成点共に上回っています。
5回の転倒による減点があった為にコフトゥンがフリーもトップになりましたが、あの状態でこの点をたたき出せる羽生は月並みな表現ですが凄いとしか言いようがありません。
とにかくカップオブチャイナがこんなに大変な大会になるとは・・・想像も出来ませんでした。