少し遅きに失したがソフトバンク和田投手の人的補償騒動について書きたい。
そもそも人的補償って何?と思われる人も、もしかしたらこの拙ブログを読んでくださるかもしれないのでこの問題の経緯を以下に簡単に記す。
人的補償とはフリーエージェント(所属している球団以外のあらゆる球団と入団交渉が出来る権利)を得た選手を獲得した場合、獲得した球団は相手球団にその見返りとして相手球団が指名する選手を移籍させなければならないことを言う。
今回ソフトバンクが西武でFA宣言した山川を獲得したことで、その見返りとして西武球団への人的補償が発生することになった訳だ(厳密に言えばFA宣言した選手の年俸により必ずしも人的補償が発生するとは限らないがそれはここでは触れない)。
人的補償はFA選手を獲得した球団(今回はソフトバンク)がこの選手は指名してもらっては困るという選手を28名リストアップして相手球団(今回は西武)に知らせる。
西武はリストアップされた28名以外の選手からひとりを指名することが出来るのだ。
今回の騒ぎの発端は一部のスポーツ紙が、西武は和田投手を指名するとスクープしたことで大騒動になってしまったのだ。
和田投手はご存知のように高い人気を誇っており、松坂世代最後の現役選手ということでレジェンドとも言われている。
スポーツ紙の報道を見て、ソフトバンクが和田投手をプロテクト(28人のリストに載せていなかった)していなかったことへの批判が渦巻いた。
それはおそらく想像を絶する大きな声となって球団に襲い掛かったのだろう。
さらに悪いことに当の和田投手に球団が西武から指名されたことを告げた時に、西武に行かなければならないなら引退すると発言し事実上移籍を拒否したとのこと。
慌てた球団は即西武球団に対して事情説明の上謝罪、解決策の相談に走った。
その結果急転直下、甲斐野投手が西武に移籍することとなりスポーツ紙が和田指名の報道をした同日中に両球団から発表されたのだ。
これだけでは終わらない。
このドタバタ劇の最後にとんでもない情報が世間に流れた。
何と甲斐野投手はソフトバンク作成の28人のリストに名を連ねていたというのだ。
基本的にこのリストはソフトバンクと西武の両球団しか知り得ない物なので、リストに入っていたのか入っていなかったのかは定かではない。
もしリストに載っているのに山川選手の補償として甲斐野投手が西武に移籍したとしたら人的補償制度が根底を揺るがす大変な事態ということになる。
事実はブラックボックスで、これについては後日ある程度明らかになる可能性はあるが、現時点では推測の域を出ないので、見えている事象から以下に思ったことを書く。
思い出すのは巨人の二人。
西武の炭谷捕手獲得時に指名された内海投手。
広島の丸選手獲得時に指名された長野選手。
この二人と今回の和田投手の指名をダブらせて考える野球ファンは多いと思う。
上記二人が指名された時も巨人ファンからは悲鳴とも言える声が沸きあがった。
しかし現在は二人とも古巣巨人に戻り存在感を示している。
それぞれが西武、広島両球団でも存在感を示し、愛されたという報道を目にするが、それについては本当にそうであればこんなに嬉しいことは無いと巨人ファンとして思う。
話しを和田投手に戻す。
和田投手の球団への強い思いは理解できるが、それほどに球団を愛するならば、将来ソフトバンクの指導者になる存在に違いないのだから他球団に身を寄せることも本来経験することが出来ない貴重な場となったと思うのだが。
28人のプロテクトは確かに少なすぎるが和田投手も42歳。
ベンチは来季も和田投手を戦力として計算していたはずだが、報道にもあるようにフロントは和田投手をプロテクトしなくても指名されないと思っていたのだろう。
28人枠は若い選手が中心となるのはやむを得ない。
こうも言える。
28人枠に入らなかったことを、指名されなかったことで本人も知らないままで、もちろん表にも出なかったより、貴重な人材として相手球団から指名されたことの方が名誉なことと考えることは出来なかったのだろうか。
この問題はまだまだ後をひきそうだが、幸い甲斐野投手が移籍を受け入れており、ここはドラフト1位で入団し初年度にセットアッパーとして活躍したその実力を西武球団で発揮して欲しいと願うばかりだ。
もちろん和田投手も自我を貫き通した訳だから、受けたバッシングを跳ね返す活躍を見せて欲しい。
和田投手 158勝87敗 勝率.645 奪三振1883 最多勝2回 最高勝率1回
甲斐野投手 7勝8敗11セーブ41ホールド 投球回147回 奪三振164