羽生結弦がシーズン後半になって異例のプログラム変更を行った。
今季ジョニー・ウィアーとプルシェンコへの敬愛を込めて取入れたプログラム。
シーズン前、羽生自身もその思いを熱く語っていた。
それがここにきてフリーに「SEIMEI」SPに「バラード第1番」への変更。
SEIMEIは3度目、バラード第1番に至っては4度目の採用である。
本当なら最後まで「Otonal」「Origin」で戦いたかったはず。
それがここにきて何故既視感がぬぐえない楽曲に変更したのか。
どう考えてもその理由はGPシリーズでチェンに、全日本で宇野に敗れてしまったことと考えるしか説明がつかない。
この両選手に勝つことが出来るプログラムへの変更。
これが最大の理由。
逆に言うとこれ以外になにがあると言うのだ。
しかしただ勝つためだけにシーズン途中で変更したという単純な物ではないはずだ。
過去幾多の壁を乗り越えてきた羽生。
今目の前にある壁は間違いなくネイサン・チェン。
その壁を乗り越えるのは北京五輪でも良いはずだ。
しかし羽生にはもう時間がないのである。
おそらく今季羽生の足の状態は近年になく良い。
けれども本人もわかっているはずだが、いつ時限爆弾が爆発してもおかしくない。
今度大きな怪我をすれば、年齢的にももう終わり。
そういった中、オリンピック2連覇、絶対王者の称号まで得た羽生にしてみれば、今のおかれている状況は許しがたいはずだ。
羽生が最も羽生らしく演技の出来る曲目。
「SEIMEI」と「バラード第1番」
これで最後の勝負に出たのであろう。
曲目が同じでも演技構成はまた別。
この中で足が壊れない限り、今出来る最高の演技を行い、そして世界選手権で表彰台の一番上に立つ。
羽生結弦の目標はそれしかないのだ。
北京五輪はもう眼中にないだろう。
小康状態を保っているとはいえ、足はもうボロボロ。
北京までは持たないと考えているのだろう。
4大陸で試運転も完了。
フリーではミスもあったが、原因ははっきりしており心配はない。
その4大陸で鍵山優真という新たな後継者も現れた。
宇野に鍵山、そのほかにも新たな息吹が感じられる昨今。
若い選手に後を託せることもわかってきた。
勝っても負けても今季限りで競技人生はひとつの区切りをつける。
羽生結弦はそう思ってるに違いない。
世界選手権。
羽生結弦の雄姿をこの目にしっかりと刻み付けることにしよう。