北京オリンピックが始まった。
何かと問題の多い大会だが、ここでは政治的なことは触れない。
オミクロンについては誰がいつ感染するかわからない。
競技日程など、運に左右されるケースが出てくる可能性があるが、神のみぞ知るってところだろうか。
それが選手達に及ばないことを祈るしかない、
既に競技は始まっており、有力日本選手も次々と登場してくる。
以前の冬季五輪は日本選手が活躍する競技が限られていた。
今は幅広い競技でメダル圏内の選手が存在しており隔世の感を禁じ得ない。
さて、このブログだが過去フィギュアスケートについて力をいれてきた。
投稿数も野球についで2番目に多い。
その中でも最大の注目は村上佳菜子の解説・・・いや違う。
羽生結弦のオリンピック3連覇が成るかだろう。
ソチでは当時の世界チャンピオン、パトリック・チャンに対しGPファイナルで、共にパーフェクトに演技した場合、チャンは羽生を上回れないことを示し精神的に優位に立った。
本番では共に失敗したが僅かに羽生がチャンを上回って金メダル。
平昌では直前まで治療に専念し、本番一発勝負で奇跡の金メダル獲得。
あれから4年。
クワドアクセルを試みることを公言し、オリンピック3連覇に挑む羽生選手。
その可能性について考察を試みる。
結論を先に書くと、現在のジャンプ偏向の採点ではネイサン・チェンが失敗せずに演技した場合、羽生選手はチェンに及ばない。
4Aに成功したとしてもだ。
その根拠を示すために直近の両選手のフリーの演技を比べてみる。
羽生選手は先の全日本、チェンは全米選手権のプログラムの構成を見る。
今のフィギュアスケートはいかに多く4回転ジャンプを跳ぶかが大切。
以前に比べ基礎点は低くなったが加点(GOE)の幅が広がり得点源なのは同じだ。
チェンはフリップ、サルコウ、ルッツ、トウーループと4種の4回転ジャンプを5回挑んで内2回はコンビネーションにしている。
後半の基礎点1.1倍を入れて基礎点は101.24にも及ぶ。
全米選手権では4Fで転倒しており回転は認定されたが5.34減点されている。
逆に4回転ルッツでは上限に近い5.59もの加点を貰った。
加点を入れた技術点の総合計が123.56。
演技構成点は転倒もあって91.06に少し抑えられたが合計212.62。
ショートプログラムとの合計328.01だった。
次に羽生選手の全日本。
ご存知のようにクワドアクセル(回転不足)以外にはサルコウとトウループの3種類4本で内2本がコンビネーションだった。
世界一と思われる3Aからのコンビネーションだが4回転時代になる前は後半に2本跳んで得点源としていたが、そこをクワドジャンプからの連続ジャンプに変えて全日本では前半に1本だけ跳ぶ構成にしている。
この構成で基礎点が88.40点でGOEを加えた技術点総合計が114.25点。
演技構成点がチェンを上回る96.80でフリー合計211.05点。
ショートプログラムとの合計322.36点。
仮に4Aに成功していた場合、基礎点が12.5(意外に低いのだ)GOEが3点としてこの要素だけで15.5点。
全日本当日に挑んだ4Aは回転不足を取られてGOEの減点があり点数4.11。
従ってプラス11.39点で333.75点あたりまでは得点を得られることになる。
但し、チェンも4Fで転倒しなければGOEの加点が付くのでこれを同じ3点として計算すれば、この要素で14点(基礎点11.0+GOE3.00)得ることになる。
全米での4F転倒ジャンプの点数が5.66だったのでプラス8.34点。
さらに転倒の減点も1点減るので、結果9.34上乗せされる。
全米ではコレオでも信じられない転倒があり、GOE減点が1.43点に転倒1点減点があり、普通に滑ればGOE2点加点とと共に転倒減点がなくなる。
そうなった場合基礎点3.00にGOE2点で5.00点は固い。
全米でのコレオの得点が1.57点なのでプラス3.43点。
転倒減点も1点減るので、ここでも4.43点上乗せ可能なのだ。
これらを計算しなおすとプラス13.77で341.78点まで点数が伸びるのだ。
非情にややこしい書き方をしてしまったが、直近の演技構成で挑んだ場合、両選手が共に失敗しなければチェンが点数で上回ってしまうのだ。
最近のSPとフリーのバランスを見ると、フリーの比重が以前より高くなっている。
SPは演技構成でそれほど差がつかないので、結局フリーの出来がメダルの色を決めることになってしまう。
但しSPでも失敗は許されず、チェンは平昌でSPで大きな失敗をしたことが致命的になっているので、両方揃えることは当然求められる。
チェンにとってはこのSPの失敗がトラウマとなっていないかが心配点だ。
オリンピックは常に魔物が牙をむいて選手たちを襲おうとしているのだ。
団体戦のSPでチェンが出場したが、平昌のSP失敗の記憶を消し去るために出たのではないだろうか。
とここまで書いてきたが、羽生選手は言葉ではオリンピックも勝ちに行くと語っているが、気持ち的にはメダル争いを超越した次元に到達しているように思う。
羽生選手も、共に失敗しなければチェンが上回ることは当然知っている。
それでもメダルを狙うために4Aを回避することは絶対にしないだろう。
前にも書いたが4Aを成功しても基礎点は12.5点。
クワドルッツと1点しか差がない。
回転不足やダウングレードになれば大きく減点される。
それでも羽生はリスクを取りにいく。
スポーツ選手は負けず嫌いだし、羽生も人一倍そういう所が見受けられるので、当然勝ちたいだろう。
しかしまずは4Aを跳ぶことを今回は、いやフィギュアスケート人生最大の目標にしているはずだ。
その上で結果がついてくれば、これ以上嬉しいことはないと思っているに違いない。
羽生結弦の競技スポーツとしての演技が見られるのは今回が最後かもしれない。
メダルは金色にこしたことはないが、それよりも羽生結弦、魂の演技を目に焼き付けておこうではないか。