村上春樹氏の「街とその不確かな壁」を読んだ。
私は「ノルウェイの森」から村上春樹に入った人間だが、本来の村上ワールドは「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の路線と思っている。
今回の作品は村上作品の源流を成すものだ。
本作を読んでいて最初は強烈な既読感に襲われた。
明らかに「世界の終わり・・・」を彷彿とさせる。
村上作品を読むのは短編集「一人称単数」以来久しぶり。
村上氏以外多くの作者の作品を読むが村上氏の小説は明らかに他の作者のそれと違う。
独特の世界観。
まさしく村上ワールド。
不確かな壁に囲まれたもう一つの世界と現実の世界を行き交う主人公。
このふたつの世界がバランスよく描かれている。
これは私の感想だが「街とその不確かな壁」は村上小説の集大成のような気がする。
でも内容を作者の意図通りに理解出来たかと問われると自信はない。
村上氏も読んだ人それぞれで感想を持ってくれれば良いと思っているに違いない。
村上氏自身もいつものように、この小説を書きながら何が飛び出てくるのかわからずに書いていたのだと思う。
それぞれの人が感じて行きついた答え、全てが正解なのだ。