先月5月6日にルイス・ネリを戦慄ノックアウトで下したモンスター井上尚弥。
試合後、観戦に来ていたIBF、WBO1位サム・グッドマンをリング状に上げ、高らかに次戦グローブを交えることを宣言。
グッドマンもこれを受け、9月の戦いは決定的と思われた。
ところがその後グッドマン陣営が9月の対戦をパス、ノンタイトル戦を行い12月にオーストラリアで井上と戦うと宣言。
井上のプロモータートップランク社のボブ・アラムもこれを認めているようで、9月の防衛戦はネリ戦でネリが体重オーバーなどで契約を履行出来なかった場合の保険として招聘したテレンス・ジョン・ドヘニーとのマッチメイクを画策。
ほぼドヘニーとの試合が決定と思われた。
ところが、ここにきてWBAが指名試合としてムロジョン・アマダリエフとの試合を指示。
7月14日までに交渉がまとまらない場合は入札となり9月25日までに試合をしなければベルトのはく奪となってしまうようだ。
アマダリエフは井上がS・バンタムに転向した時二つのベルトを保持しており、フルトンかアマダリエフかどちらと戦うのかが話題になった。
フルトン、ネリを倒した今、井上は政治的なことを抜きにすればアマダリエフと一番戦いたいのではないだろうか。
サム・グッドマンより明らかに難敵で、いつかは戦わないといけない相手、それがアマダリエフだ。
しかし今の流れでからすると9月はドヘニーと戦う可能性が最も高い。
それは、アラム氏、大橋陣営がWBAの指令に反発しており、大橋会長ははく奪もやむなしと語っているようなことからも明らかだ。
ドヘニーには、ネリの保険として来てもらった恩も感じているという報道も見たし、予断は許さないがドヘニーで決まるのだろう。
しかしドヘニーも決して弱くはないが、井上の過去の相手から考えるとどうしても物足りなさを覚えてしまう。
これが井上以外の日本人チャンピオンなら何の違和感もなく受入れられるだろう。
それどころか指名試合をクリアした次の試合は楽な相手と戦ったら良いという思いを持つことの方が多い。
ドヘニーはWBC9位・WBA8位・IBF7位でWBOが2位だ。
全ての団体でトップ10にランクインしており挑戦者の資格は十分にある。
過去には当時の世界チャンピオン岩佐亮佑に挑戦してベルトを奪取。
しかし2度目の防衛戦で敗れ、ノンタイトルだがサム・グッドマンにも敗れている。
身長、リーチ共に井上とほぼ同じで、井上が負ける姿は全く想像できない。
逆にこの試合は井上にとって何のメリットもないように思う。
今や井上の名声は世界中に轟き、一部には早くフェザーに階級を上げて戦うべきとの論調がある。
ほとんどの識者はしばらくはS・バンタムに留まり、フェザーに転向しても身体的な不安がないようになってからするべきと語っているが、それもこれも今まで井上がその階級の強豪ばかりを相手にして圧倒的な強さを見せていたからだ。
今や世界中の強豪が井上を語る時、絶対に俺が勝つ!と言いながらも井上は尊敬するボクサーと称えるのを忘れないのは、井上の実績があまりにも凄く誰も文句が付けようがないからだ。
だがドヘニー戦なら勝って当たり前。
マッチメイクの難しさを知らない者からは、楽な相手を選んだと言われかねない。
有り得ないことだが、万が一、いや億が一敗れることがあるようなら大変だ。
いや、苦戦するだけでも評判は落ちてしまう。
ドヘニーとやる場合は、誰もが納得する圧倒的な勝ち方が求められる。
しかしご存知のように、勝って当たり前の相手程難しい試合は無い。
井上のモチベーションも問題だ。
9月に何とかアマダリエフとの試合が実現しないか。
いずれは戦わなければならない相手。
じゃあいつやるの? 今でしょ!
私はそう思ってしまうのだ。
S・バンタム4団体統一王者 井上尚弥 27戦27勝(24KO)
テレンス・ジョン・ドヘニー30戦26勝(20KO)4敗
サム・グッドマン 18戦18勝(8KO)
ムロジョン・アマダリエフ 13戦12勝(9KO)1敗
参考 アラン・ピカソ 29戦28勝(16KO)1分