思えばこのスポナビに参加させていただいて最初の投稿が井上選手のデビュー戦に関する記事だった。
あれから1年4カ月、ついにこの日はやってきた。
史上最速世界王者を狙う怪物井上尚弥。
次回挑戦者にロマゴンを指名し、その実現の為にも負けは許されない八重樫。
いずれも注目度の高い世界タイトルマッチである。
結果は果たして・・・という所であったが、両者共に勝利し、それぞれ大きな壁をクリアする事になった。
八重樫は井岡との統一戦で敗れはしたものの、圧倒的不利の下馬評に対し、大善戦して、ある意味井岡以上に注目を浴びた。
元々ポンサワンに勝って世界王者になった試合が年間最高試合に選ばれる程の魅せるボクサーだが、最近は安定した強さが備わってきた印象だ。
ただ、今日の試合よりも、次戦のロマゴン戦の方が話題になってしまって、これは非常に危ういケースだ。
案の定というか、試合は挑戦者オディロン・サレタの方がジャブ、ワンツーなど手数が多く、八重樫ペースをつかめない。
3ラウンドにようやく相手との距離を気持ち縮めて、サレタにパンチを当て始めるが、単発のパンチになってしまう。
しかし、ここらあたりから少しずつボディをヒットさせるなど八重樫のペースに成りかける。
ただサレタも勇敢に攻めてきて手数も多く、八重樫は幾度かこのパンチをもらってしまう。
ようやくサレタの顔面にワンツーをヒットさせるが、マウスピースが飛んでしまい、試合が中断してしまうなど、どうしても乗りきれない。
しかし八重樫は6、7、8Rとサレタのボディを執拗に攻める。
これが最後に生きた。
9Rに降り抜いた右が綺麗にサレタを捉え、その後パンチをまとめてサレタダウン。
ボディ攻撃が効いていたのか、倒された事によりサレタの戦意は一気に喪失したように見受けられた。
ファイティングポーズを取る事が出来ず、八重樫のKO防衛が成った。
サレタは手数が多く、パンチの切れもあり、なかなか強敵だった。
しかし、過去多くの苦しい試合を経験した八重樫は決して慌てる事はなかった。
いくらサレタに打ちこまれても安心して見ていられたのは、この落ち着き、動じない試合運びによる物だ。
八重樫の貫録勝ちである。
試合後、何と、リングサイドで観戦していたロマゴンがリングに上がって八重樫を祝福した。
次はいよいよロマゴンとの世界戦だ。
本当はロマゴンがリングにあがって祝福するパフォーマンスを見せる相手は井岡であったはずだ。
やはり井岡は大きな物を失ってしまったと思う。
八重樫の勇気ある行動には感服する。
勝った八重樫23戦20勝(10KO)3敗 敗れたサレタは19戦15勝(8KO)4敗となった。
史上最速王者を狙う井上尚弥。
相手は4度防衛を重ねてきたファイター、アドリアン・エルナンデス。
試合開始前レフェリーが両者をリング中央に呼ぶ。
あきらかに表情が固いエルナンデス。
井上が只者ではない事を承知しているのだろう。
対する井上は緊張のかけらも見られない。
プロ5戦の弱冠二十歳とはとても思えない。
ゴングが成ってからは驚きの連続だ。
スピード豊かな左右のパンチが次々とエルナンデスの顔面、ボディにヒットする。
エルナンデスは防戦一方。
とにかく井上の攻撃は凄まじい。
ワンツー、ワンツースリーと全てのパンチが相手のガードをくぐり抜けヒットする。
3Rには強烈な右を食らったエルナンデスの左目上がカット、流血となった。
もはや井上の勝利は時間の問題と思われる圧倒的な内容。
しかしさすがにエルナンデスもこのままでは引き下がれない。
4Rようやく前に出てきて接近戦でパンチを繰り出すようになり、ようやくファイター、エルナンデスらしさが出てきた。
5R井上はエルナンデスの左右のフックをもらい、乱戦に持ち込まれそうになる。
しかし6Rエルナンデスのペースかと思われた接近戦の中でも見事反撃し、最後強烈な右がエルナンデスの顔面を捉え、たまらずエルナンデスダウン。
起き上がるも、やはり前半からかなりのパンチをもらっている影響もあってか、戦い続ける気力は残っていなかった。
ここに井上史上最速6戦目での世界王者奪取成った。
いやあ、ほんと衝撃的だ。
さすがに4R、5Rはエルナンデス捨て身の攻撃に井上もたじろぐ場面もあったが、結局接近戦での打ち合いにも対応出来た訳で、井上の懐の深さを感じる。
1~3Rの攻撃はそれはもう圧倒的で美しい程だった。
結局ロマゴンを倒す男は最終的に井上尚弥しかいないのでは・・・と思わせる衝撃のベルト奪取だった。