ついにこの日がやってきた。
あの激闘から2年7カ月。
月日が過ぎるのは本当に早い。
井上の勝利を信じていたが、今までで一番危険な香りを感じていたのも事実。
ドネアは前回の敗戦後、全盛時を思わせる強さを取り戻して埼玉に帰ってきた。
しかし結果は井上の圧勝、激勝。
井上の試合にはいつも興奮させられるが、今回は今までの比とは比べ物にならない。
戦前井上はかつてないほど激しい言葉を発していた。
「今回はドラマにならない」
「一方的終わる。何もさせないで終わる」
ドネアを挑発するようなコメントだ。
試合後のインタビューで、自分自身にプレッシャーをかけるためだったと語っていたが、最初に読んだ時、うわっ、言わないほうがええのんと違う?って思っっていた。
それが言葉通りの戦いぶり。
本当はすぐにここに投稿したかったが、あまりの興奮で中継が終わってから幾度も試合を見てしまったためこの時間になってしまった。
ドネアは入場するとき前回とは全く異なる表情。
前回は穏やかな表情で入場し笑みも見られたと記憶している。
当時はWBSS決勝の舞台に立ったことで幸福感を感じていて、負けても本望と思っているのかなと思って見ていた。
今回のドネアは期する表情のように見えた。
極限まで気持ちを高ぶらせ、絶対に勝つという意気込みが緊張と高揚の入り混じったあの表情になったんだと思う。
計量パス後の身体も前回とは違った。
前回ほど体重を戻していないように見えた。
1Rが始まってドネアの動きを見てすぐに井上のスピードに対抗するためだと思った。
開始早々ドネアの左フックが炸裂。
井上はこれで気持ちがピリッとしたと語っていたが、これを狼煙に両者片時も目が離せない緊張感あふれる攻防に。
ドネアの迫力あるパンチは見ていて怖い。
しかし井上はまともには貰わずスピードあふれる左右のパンチを繰り出し1Rとは思えない両者全開の戦い。
そして迎えたラウンド終盤に井上があの右クロスをさく裂させたのだ。
一発でドネアダウン。
過去の試合でも数多く見せたドンピシャのタイミングで放つパンチ。
ドネアからすると、井上の右に気づくのと被弾したのがほとんど同時だったはずだ。
しかし1分のインターバルでドネアは完全とはいかないまでもかなり回復していた。
右、左とド迫力のパンチを繰り出してくる。
しかしここから井上のモンスターぶりが遺憾なく発揮される。
スピードあふれる井上の攻撃。
右ストレートに左フック。
マクドネル戦やロドリゲス戦でも見せた怒涛のラッシュ。
今回は更に正確性も加わり見ていて鳥肌が立った。
あのドネアがあれだけ激しいダウンを喫したのだ。
正にモンスター。
戦慄のTKO勝ちだ。
もうバンタムに敵はいない。
がしかし、ここまで来たらバンタムの4団体統一を成し遂げて欲しい。
井上は試合後今年中にポール・バトラーとの統一戦が叶わなければスーパーバンタムに転向すると断言した。
ドネアに対して明確に差を見せつけた今回の試合。
明らかに格下のバトラーとの勝敗は明らかだ。
待ってろフルトン。
井上尚弥の戦いは新たなステージに入っていく。
しかしレジェンド、ノニト・ドネアは最後まで紳士だった。
長きに渡って輝きを見せ続けてくれたドネア。
本当にお疲れ様と言いたい。
今後に残るようなダメージを受けていないように願うばかりだ。
3団体統一世界バンタム級王者 井上尚弥 23戦23勝(20KO)
フィリピーノフラッシュ レジェンドノニト・ドネア49戦42勝(29KO)7敗