今年もフィギュアスケートシーズンが始まった。
現在ISU承認のチャレンジャーシリーズが行われている。
10月にはいよいよGPシリーズも始まる。
今季もロシアがウクライナ侵略に対する制裁として国際大会への参加が認められていない。
現在女子シングルは坂本花織、男子シングルも宇野昌磨が世界選手権2連覇中だ。
さらに前回大会ではペアでりくりゅうこと三浦璃来・木原龍一ペアが優勝。
アイスダンス以外日本勢が全て優勝の快挙を成し遂げた。
ひと昔、いや、ごく最近まで日本ペアが金メダルを取るなんて想像もしていなかった。
残念なのはアイスダンス高橋氏の引退により村元・高橋組の演技が見られないことだ。
そんな素晴らしい出来事が起きた前年を経て始まった今シーズン。
どうしても忘れられない選手がいる。
その名は紀平梨花。
つい先日今シーズンを治療に専念するとし、全休することを明らかにした。
ジュニア時代から注目を浴びていたが、シニア初参加のGPシリーズで連勝。
しかし常に精神的に弱いなどネガティブ評価も付きまとった。
ところがその勢いは止まらずファイナルでもザギトワ、トゥクタミシェワ相手に優勝。
すい星のように紀平はシニアのリンクに現れたのだった。
当時の演技構成は紀平がノーミスで滑れば、他の選手は誰も紀平に及ばない。
それほどレベルの高い内容だった。
しかし最大目標の世界選手権ではSPの失敗が響き4位。
私はシニアデビューのこの年(2018~2019シーズン)、試合過多だったことが原因だと思っている。
具体的には4大陸参戦後(優勝)オランダで行われたチャレンジカップへの参戦。
これが不必要だった。
これにより世界選手権はシーズン8戦目となった。
世界選手権の時にはすでにピークを過ぎていたのだ。
それでも北京五輪に向けて期待は膨らむばかりだった。
ところがコロナパンデミックと右足を襲った疲労骨折が紀平選手の運命を大きく変えてしまった。
オリンピックシーズンの主要大会のみならず全日本も欠場となり北京五輪への道が絶たれてしまった。
その疲労骨折の影響が今も彼女の復帰の障害となっているのだ。
今シーズンエントリーしていたGPシリーズ・スケートカナダの出場を辞退。
3年後(シーズン的には2シーズン後)のミラノ五輪に向けて右足の完治を目指し今シーズンを全休することを発表した訳だ。
紀平選手は3Aの成功率が高く、ルッツもフリップもエッジ違反をもらわない。
しなやかで柔らかい滑走、リカバリー能力、どれをとっても一級品。
なにしろ平昌五輪金メダルのザギトワと紀平のプログラム比較において紀平の方が難易度が高かった。
これは羽生結弦選手がソチ五輪シーズンのGPファイナルで当時世界選手権3連覇のパトリック・チャン氏より高度なプログラムで優勝し、チャン氏に大きなショックを与えたのと同じ状況。
紀平選手は今シーズン全休により4シーズン表舞台から姿を消すことになった。
ミラノ五輪を目指すには来シーズンの復帰は絶対条件だ。
復帰しても茨の道が待っている。
それでも才能がほとばしったシニアデビューのシーズンを見たスケートファンなら復活を信じたいだろう。
フィギュアスケート選手にとって足の怪我からの復活は苦行と言ってもよい。
しかしそれでも来シーズン、リンクを華麗に滑走する紀平選手を見たいとの思いは募るばかりなのだ。