北京オリンピック選考会を兼ねるフィギュアスケート全日本選手権が開催されている。
オリンピックや世界選手権でも手汗握る張り詰めた戦いが見られるが、私は全日本が一番好きだ。
特に女子シングルSPは毎回有力選手の失敗がほとんど見られない最高レベルの争いが繰り広げられるので興奮物なのだ。
例にもれず今回も大激戦。
2位の樋口新葉選手から6位松生理乃選手までが僅か2.35点の間にひしめきあう。
GPシリーズが結果として成立していないので全日本で表彰台に乗った選手が代表に限りなく近づくシチュエーション。
そんな中、昨日行われたフリーは各選手間で明暗が分かれた。
病から復帰の三原舞依選手。
2016~2017年シーズンのスケートアメリカで初めて彼女を見た時、しなやかにジャンプを跳び、スピンを舞うのに驚いた。
体調を崩して後、しばらくぶりに見た彼女の痩せ具合に心配したが、彼女らしさも戻ってきて臨んだ全日本。
冒頭のジャンプから三原らしさが戻ってきた印象だ。
しかしアクセルとトゥーループの連続ジャンプがシングルになる痛恨のミス。
タラればはないのだが、これを普通に跳んでおれば表彰台だったと思われ悔やんでも悔やみきれないというのが偽らざる心境だろう。
それでもここまで戻ってきた三原には純粋に拍手を送りたい。
浅田選手が一線を退いた後日本を引っ張ってきた宮原知子選手。
昨年あたりからやたら回転不足を取られるようになり、それが点数が伸びない要因となり、今年も結果的にそれに苦しめられている感じ。
演技構成点は変わらず高い得点をたたき出す宮原選手だが、競技フィギュアでは辛い。
それでもたとえ順位が伸びなくても宮原ワールドは今も見るものを魅了する。
彗星の如くと言う表現がぴったりの河辺愛菜選手。
いつの世も選手としての伸び盛りが大舞台と時期的に一致する選手が現れる。
それが今回は河辺選手というのは衆目の一致するところ。
置かれた立場はこれ以上ない緊張に支配されるであろう五輪がかかったフリー演技。
そこでトリプルアクセルを見事に成功させる強さ。
まだまだ粗削りだが何しろ誰にも負けない勢いがある。
予定した連続ジャンプを跳べなかったがしっかりリカバリーも出来る冷静さ。
GOEの加点はまだまだ少ないし、減点もある。
しかし全てのジャンプを跳びきった事実。
インタビューの雰囲気などを見ていると村上選手を思い出す。
これからどこまで化けるのか。
とても楽しみな選手が現れた。
渡辺倫果選手。
SP8位からフリーでのおそらく彼女史上一番の演技でトップ6に食い込んだ。
何とフリーの技術点が75.73。
これは優勝した坂本選手に次ぐ2番目の高得点だ。
演技後の彼女のやりきった笑顔を見るとこちらまで嬉しくなってしまう。
これが全日本選手権の良いところだ。
オリンピックを目指す選手。
練習を重ねてその成果を出し切ろうとする選手。
ジュニアの選手がシニアに混じってどこまで自分の力が通用するか試す選手。
全日本という大舞台に出場することでひとつの目標を達成して雰囲気を満喫する選手。
様々な思いが交錯するのが全日本なのだ。
そして上位2選手。
まずは樋口新葉選手。
実は彼女はまだ20歳!
念願の、悲願のオリンピック代表をついに手中に収めた。
樋口選手で思い出すのは13歳で出場した全日本。
村主、安藤、鈴木各選手が引退、浅田選手のハーフハーフ休養。
一気に世代交代が進んだ時の全日本。
ここでベールを脱いだのが樋口選手だった。
結果は3位。
圧倒的なスピードと次々と決めるジャンプ。
順位こそ宮原、本郷についで3位だったが新星誕生に会場は大いに沸いた。
私が驚いたのはその演技ではない。
3位で受けたインタビューで涙のインタビュー。
これが普通なら歓喜の涙となるところだが、実はこれが悔し涙!
あれから7年経った訳だ。
前回の平昌で涙の落選。
今回初めてと言って良いのではないか。
樋口選手歓喜の涙だ。
そして坂本花織選手。
平昌ではシンデレラガールだった。
代表の座を前述の樋口選手と争う形となり、結果は坂本選手が代表の座を得た。
紀平梨花選手不在の現状、日本のエースは紛れもなく坂本選手だ。
今のフィギュアスケートはとにかくジャンプの比重が高く、少々芸術性が高くても上位にはいけない。
しかし全日本の坂本選手の演技を見ていると、もしかしたら本番でパーフェクトの演技が出来たら表彰台もあるのではと思わせる素晴らしい内容だった。
代表3人は表彰台の3人で決まりだろう。
さあ、いよいよ男子フリー!
SPで超絶演技を見せた羽生結弦。
いつも我々の想像の上を行く羽生選手だがフリーと2本揃えることが出来るか。
注目だ!